自分流悪路走破考察


伝家の宝刀

[2003-09-21]

 昔、我が家にも「伝家の宝刀」というのがあった。いろいろとあってすでに手元にはないが、 今でもその圧倒的な存在感とズッシリとくる重さはよく覚えている。岡山には備前長船という名刀 の産地があるが、以前の我が家の宝刀も中世の備前長船の業物だった。

 親しい親戚に古美術商がいたのでよく日本刀の優秀性を教えてもらっていた。私も詳しくは知らない が、切れ味に優れた玉鋼を粘りに優れた軟鉄に包んでいるので、切れ味と粘り(折れ難さ)を両立 しているというのは聞かされていた。確かに切れ味は鋭かったがハイス鋼のガーバーのフィレナイフ などはいとも簡単に折れてくれた。確かに今の西洋的なナイフは鋼材などが非常に優れているので 錆び難さと切れ味と折れ難さを高いレベルで両立しているとは思うが、イマイチ興味が持てないのは 私にとっては日本刀の優秀性と悪魔的な魅力が頭のどこかに残っているからだと思う。

 よくクルマも刀物に例えることがある。重いだけのランクルなどはよく「斧」に例えられる。 「重い」=「斧」っていうのも随分な極論だと思うが、どうせ比較するなら「走りの切れ味・ 走破性」を「刃物の切れ味」と比べてみたらどうだろう。自分的な比較だと、「カミソリ的な クルマ」というのは、切れ味(走破性)は確かに鋭いが、簡単に折れてしまう(故障して走れなく なってしまう)クルマだ。反対に「斧的なクルマ」というのは頑丈なのは頑丈なのだが、切れ味 (走破性)は最低で、切ろう(走ろう)とするには膨大な労力が要るクルマということになる。

 自分の感想では「カミソリ的なクルマ」は実に多くクロカンで見かける。最大風速は確かに 強いのだが、「あれ?どこに行ったのかな〜?」と思っているとコースの端で一生懸命修理して いたりする。マニア受けは良いのだが、根本的な駆動系の強度不足でボキボキ・ベキベキと骨折を 繰り返す可哀相な外車もこれまた多い。ある場所での切れ味(走破性)は確かに高いのだが、折れる のが怖くて(故障やボディの損傷が怖くて)切って楽しい(走って楽しい)処に入れないという クルマも「カミソリ的な」クルマだろう。

 正反対の「斧的なクルマ」というのは、切れ味(走破性)が基本的に低いので、切る(走破する) のにとてつもなく労力が要るクルマということになる。もしくは切る(走破する)のが不可能な クルマということになるかな?もっとも最近の車はランクルですら華奢な駆動系の「重いだけの クルマ」が増えてきたので、「カミソリの刃の様に折れやすく、斧の様に重い」という困ったクルマ が増えてきた。

 自分の理想としては、その中間の「切れ味はあるが、折れ難い」という特性を持つ、日本刀的な クルマということになる。だが、これもなかなか安い費用で手に入れるということは難しい。 金を掛けると確かに切れ味が良くて、折れ難い刀も手に入るかもしれないが、私の場合は金が 無いので、多少、「切れ味」の方は我慢しなければいけないみたいだ。刃物をひたすら研ぐ(走破 性を上げる)のが好きで、刃をドンドンと薄くしていくのが好きな方も多いみたいだが、絶妙な 切れ味を楽しむのと引き換えに切れる場所や条件を随分と限定させないといけないのはどうも私の 趣味に合わない。自走での走破性を優先するあまり、基本的なレスキュー用品を持たないのも 随分と薄い刃を持つ刃物の様に思える。

 以前、剣道を十数年ほどしていたが、切れ味や戦闘力というのは剣は操る人間の技能で随分と差が 出ると思う。よく「三日練習をサボると、取り返すのにその十倍練習しなければいけない」と言われ たものだが、実際その通りだと思うし、鍛錬をするのに使う自分の刀があまりに華奢だと鍛錬すら おぼつかないのは悲しいものだ。自分の場合「腕を磨く」というのがクロカンでの最重要課題なので、 自然と自分の愛刀は「切れ味を多少犠牲にしても折れ難い刃物を」求めるようになっている。自分の 今の愛刀は、まだ駆動系(デフやCVJやミッションなど)の破損などはおこしたことがないので 折れ難いというのは当てはまるだろうとは思うが切れ味では「??」なので、例えるとしたらボロ ボロに刃こぼれして外観的にもビックリするようになってしまった、どこか斧的な日本刀みたいな もんだろうと思っている。

 いつの日か、以前家にあったような真の意味での「伝家の宝刀」を手に入れたいとは思っているが、 それまでにはそれを操るにふさわしいだけの腕も身に付けておきたいものだ。



自分流悪路走破考察 の索引に戻る

Page046に戻る

Page048を開く
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送